自転車同士の接触事故の場合も、基本的には示談の方法は自動車事故と同じです。
損害についても、治療費や慰謝料、休業損害などを算定することになります。
一見、簡単に解決できそうな自転車同士の事故ですが、トラブルになることも少なくありません。
自転車事故の場合、当人同士で話し合いをすることが多いからです。
本人同士だと、専門的な知識もなく、感情的になりやすい!
始めのうちはスムーズに交渉をしていても、時間の経過とともに記憶が曖昧となり、相手の態度が変化する事も。
いつまでも解決へと進まないケースは多くあります。
また、自転車事故の多くは未成年者が対象となるため、親が法定代理人として交渉相手となります。
親が出てくることで、話がややこしくなる事も少なくありません。
ここでは、自転車同士の事故の対処の仕方やスムーズに解決できる方法を説明していきます。
1. トラブルにならないための対処〜事故状況を覚えておく&警察に連絡をする
自動車事故では、事故ケースごとに過失割合が決まっております。
しかし、自転車事故では、過失割合が予め決められてなく、決まった基準がありません。
これがトラブルになりやすい原因の一つです。
自転車事故の過失割合を決める際には、過去の類似事件の判例を探したり、自動車事故のケースを参考にしたりするなど、ケースごとに過失割合を決定する必要があります。
よって、事故状況のことをよく覚えておくことが重要です。
事故があったことを証明するために、警察への届け出もするべきです。
怪我が負うなどの人身事故の場合には、自動車事故と同様に警察による実況見分を行ってください。
警察に届け出ておくことで、
交通事故証明書を取得する事ができます。
また調書を取ることで時間が経過しても事故状況の確認ができます。
また、その事故の目撃者がいる場合、協力をお願いし、連絡先等を教えてもらっておくといいでしょう。
2. 過失割合でもめたり当事者同士での示談が困難な場合の対処
自転車同士または自転車と歩行者との事故では、多くの場合が当事者同士での話し合いにより示談や和解をする事になります。
素人同士の話し合いになるため、どうしても折り合いがつかず、揉めて示談成立へと進まない場合があります。
この場合、簡易裁判所の民事調停や民事裁判の利用を考える必要があるでしょう。
過失割合についても同様です。
基準がない以上、最終的には法的に判断してもらうしかありません。
当人同士で揉めてしまった場合には、まずは専門家に相談してみてください。
専門知識を持つ弁護士が間に入ることで、裁判にならずに解決できる可能性も多くあります。
60万円以下の損害賠償請求であれば、小額訴訟が利用できますし、どのような解決が望ましいのか、一度弁護士に相談してみるといいでしょう。
なお、過失割合については下記のような基本的な文献もあります。
ただ、これが基準というわけではありません。
参考程度としたうえで交渉を進めてみるのもいいでしょう。
<参考書籍>
「自転車事故 過失相殺の分析」
編著:日弁連交通事故相談センター東京支部
「過失相殺研究部会」
出版:ぎょうせい
「交通事故における過失相殺率」
著者:伊藤秀城、出版:日本加除出版
また、相手が任意保険に加入している場合、保険会社と揉める場合もあります。
相手は示談交渉のプロです。
理論的に証拠を示しながら交渉する必要があります。
この場合にも弁護士に相談をしておいた方がいいでしょう。
3. 自転車事故の損害額計算と保険の適用について〜自賠責保険の適用がない
自転車事故で請求できる損害や計算については、自動車事故と同様ですが、自賠責保険の適用がありません。
加害者が任意保険に加入しているか、資力があるかどうかがポイントとなります。
任意保険に未加入、加害者側に資力がないような場合、損害賠償額全額を受けとれない事もあります。
そういった場合には、社会保険や被害者自身が加入している保険を利用する必要があります。
ここでは、自転車事故の際に利用できる保険について紹介します。
3-1 自転車事故で利用できる保険
・健康保険
治療については健康保険が利用できます。
治療費を抑えるためにも健康保険の利用をお勧めします。
・労災保険
仕事中や通勤途中での事故の場合、労災保険が利用できます。
自分が勤務している会社に問い合わせてみましょう。
ただし、お昼休憩中などの事故では労災保険が適用されないケースもありますので注意しましょう。
・国民年金、厚生年金など
死亡事故の場合。
加入している公的年金の障害基礎年金、遺族基礎年金等の給付を受けられる場合がありますので確認してみましょう。
・個人賠償責任保険(加害者)
日常生活において、第三者の生命や身体などに損害を与えた場合に保険金が支払われる保険です。
個人賠償責任保険は単独の商品としてもありますが、火災保険や自動車保険、傷害保険などに特約として付いている場合もあります。
また、クレジットカードに付帯されている事もあります。
加害者になった場合、加入している保険やクレジットカードに個人賠償責任保険が付いているかどうか確認してみて下さい。
・傷害保険(被害者)
この保険は被被保険者が一定の条件のもと身体に損害を受けた場合に定額の保険金が支払われるものです。
- 傷害総合保険
- ファミリー交通傷害保険
- 普通障害保険
- 家族傷害保険
- 子供総合保険
などの種類があります。
・人身傷害補償保険(被害者)
基本的には自動車事故に適用される保険ですが、中には自転車事故を対象としたものもあります。
・自転車総合保険(被害者、加害者)
自転車事故で加害者となった場合も被害者となった場合も利用できる保険です。
・TSマーク付帯保険(被害者、加害者)
自転車安全整備士よる点検、整備を受けた自転車に貼られるのがTSマークです。
このマークが付いている自転車に乗っていた場合、点検日から1年以内であればこの保険の対象となります。
加害者及び被害者、どちらの場合も保険金が支払われます。
1年の保険有効期間が過ぎた場合でも、必要な点検、整備を受ければ再度TSマークは貼られ、保険が有効となります。