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過払金返還訴訟が提訴された場合

被告である貸金業者が法律上の原因なく不当利得を受けたか否かとか、損害賠償の請求額はどの程度の水準が適切か、といった実体的な問題に関する当事者同士の対立以外にも、手続的な対立も生じます。

 

手続上の対立は、枝葉のことのようにも思われますが、これによって、原告が訴訟を断念せざるを得ない状況に追い込まれることもありますから、決して、軽視できる問題ではありません。
以下では、この過払金返還請求訴訟で問題となる、裁判手続上の問題を述べていきます。

 

この問題には、移送、支配人訴訟、取引履歴の開示の3つがあります。

 

(1)移送について

 

移送とは、例えば、地方に住む原告が、自分の住所地の最寄りの裁判所に過払金訴訟を提起した場合に、被告である貸金業者が、会社の本店のある東京の裁判所でその裁判を行うよう、審理を行う裁判所の変更の申立てをするような場合のことです。

 

原告が、裁判所が東京に移ることによって、その出頭費用を支払えない場合が多いことを知っている被告が、原告の訴訟遂行を断念させることを目的とし、あえて、裁判所の変更を申し立ててくることがあります。

 

この被告の申立てに対しては、原告側が資力が乏しく、逆に、被告側が十分な資力があり、また、大半は、原告の住所地に営業所を設けており、取引データも本店から簡単にとりよせることを説明し、被告の申立ては理由がないと抗弁を提出します。

 

一般的な場合には、この抗弁を行えば、被告の移送の申立ては却下されます。

 

ただし、原告が被告から貸金を行った際の契約書に、この契約に関する裁判については、被告に都合の良い簡易裁判所において行う、といったような条項を定めている場合があります。

 

このような場合には、まず、大抵の場合、借主がこの条項の意味を深く考えないで、契約を結んでいるため、この条項は無効であると主張します。

 

次に、本移送によって、訴訟の著しい遅滞を生じ、又は、当事者間の平衡を害する恐れがあるとして、この移送に対する抗弁書を提出します。

(2)支配人訴訟

 

地方裁判所における裁判(訴額140万円超の訴訟等が該当する)では、訴訟代理人は、弁護士でなければなりません。

 

もし、弁護士を依頼しない場合には、被告は、その会社の代表取締役又は支配人が、訴訟を行わなくてはなりません。

 

しかし、貸金業者の中には、弁護士費用の負担を避ける目的で、実体のない支配人を登記して、その支配人を代理人として、裁判を行おうとするところもあります。

 

そのような場合には、原告が、被告の支配人の資格を徹底的に争えば、被告の方から和解を求めてくることもあります。

 

まず、裁判となり、相手側が支配人を立ててきた場合には、支配人の資格が明らかとなるまで、支配人の答弁書の提出をはじめとして、その訴訟活動の一切を認めない意見書を提出します。

 

 

また、その会社での支配人全員の登記事項証明書や、支配人を選任した株主総会の議事録などの支配人の資格を確認できる書面の提出を求めます。

 

また、被告に対して、その支配人が、実際にどのような権限に基づき、どのような業務を行っているのかの説明を求めます。

(3)取引履歴の開示

 

過払金返還訴訟においては、被告である貸金業者が保有する過去の金銭貸借の取引履歴の開示が不可欠です。

 

この開示を被告が拒んだ場合には、まず最初に、被告が任意に取引履歴を開示するように、裁判所の指導を促します。

 

 この裁判所の指導に被告が従わない場合には、裁判所から、被告に対して文書提出命令を発してもらう方法があります。

 

しかし、文書提出命令に対して、被告が異議を申し立てると、その審理の間は、原審が停止することになり、手続が遅延します。

 

他に方法がある場合には、先に、そちらの方法を利用します。

 

被告が開示に応じない場合、貸金業者から原告に対する貸金の送金が、金融機関を通じて行われている場合、その金融機関に、その口座の送金履歴の開示を嘱託するという方法があります。

 

嘱託を受けた金融機関が、その嘱託に応じ、送金履歴を開示して、それで取引履歴が明らかになれば、問題はそこで解決します。

 

ただし、この方法は、被告が取引量の少ない中小の貸金業者である場合に有効で、被告が大手の場合には、開示手続が非常に複雑となり、金融機関が嘱託に応じないことも想定されます。

 

様々な方法を試したが、被告が保有する履歴を開示できない場合、最終的には、裁判所に文書提出命令を出してもらいます。

 

この命令が出ますと、被告に取引履歴の開示義務が生じます。

 

また、被告がこの義務の履行を拒んだ場合、その文書(履歴)に関する原告の主張が真実であると認めることができるようになります。したがって、仮に、この命令を被告が拒否した場合でも、裁判は、原告が有利なほうに進みます。

 

この命令に対して、被告が抗弁した場合には、訴訟が長引くというデメリットはあります。

 

しかし、この命令を発せられた途端、そのような履歴は存在しないと主張していた被告が、突然、取引履歴を開示してくる場合もあります。

 

いずれにしても、取引履歴の開示の問題は、最終的には、文書提出命令によって解決します。

 

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