「譲ってあげた猫、やっぱり返して」もう大切な家族の一員なのに!!本当に返さないといけないの!?

あきこさんは、旦那さんと娘さん1人の、3人家族の専業主婦です。

最近、娘さんは学校の部活で夜になるまで帰ってこなくなり旦那さんも毎日お仕事が夜遅くまであるため、一日中家で一人でいるのも寂しくなってきました。

『一日中家で一人きりって、結構寂しいものね。子どもも大きくなって手がかからなくなってきたし…何かペットでも飼おうかな。』

そんなことを考え、近所のペットショップのチラシ等をチェックするようになってきたあきこさん。

そんなあきこさんは、ある日、こんな張り紙を目にしたのです。

生後3ヶ月の可愛い子猫です。飼い主さんを探しています。

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そこには、可愛い子猫の写真とともに、詳しい情報が書かれていました。

どうやら、飼い猫が出産をしたらしく、生まれてきた子猫たちの引き取り先を探している、とのこと。

両親である猫は2匹とも血統書つきということですし、子猫たちは既にきちんとワクチンの接種も済ませてあると説明されていました。

『こんなに可愛い子猫ちゃんを譲ってもらえるなんて!!すごくいいお話じゃない♪』

あきこさんは大喜びで、早速張り紙の連絡先をひかえました。

その晩、あきこさんは、旦那さんと娘さんに、子猫を譲ってもらえるかも!!と意気揚々と話しました。

「えー!!うちで猫飼うの?!やった!!!」

娘さんは早速大喜びです。しかし、旦那さんは

猫を飼うのは別にいいけど、譲ってもらうって、大丈夫なのか??きちんとしたペットショップで買った方がよくないか??

「なによ!両親ともに血統書つきの猫ちゃんですってよ!!何も問題ないじゃない!!」

「いや…血統書とかそういう話じゃなくて…個人間でそういうやりとりをして、何か問題があった時、ややこしいことになったら嫌じゃないか。」

「問題って何よ、お父さんは心配症ねぇ。大丈夫よ!今度ご連絡して、きちんとお話伺ってくるわ♪」

あきこさんは多少強引に、そう話をまとめてしまいました。

後日、張り紙の飼い主さんに電話をし、あきこさんは直接子猫に会うことになりました

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飼い主さんは、気のよさそうなご年配のご婦人の、田中さんです。

田中さんは母猫を非常に可愛がっている様子でした。

生まれたばかりの子猫も、とても愛らしくて、あきこさんは一目見てとても気にいってしまいました。

すごく可愛い子ですね!是非、譲って頂けないでしょうか?絶対に大切に育てます!!

「ありがとうございます。大切に育てて、可愛がって頂けるのなら、是非貰ってやってください。」

田中さんは、あきこさんが『大切に育てる』と言ってくれたことが嬉しかったようで、

「しっかりした方のおうちの子になれて、良かったわねぇ。」

と子猫を優しくなででいました。

それから数週間後、あきこさんの家で子猫を迎えいれる準備が完了し、晴れて、子猫はあきこさんの家の家族となったのです。

あきこさんをはじめ、旦那さんや娘さんも、やってきた可愛い子猫に夢中になりました。

子猫は「ハナ」と名付け、家族皆で大切に育てました

ハナも、家族に懐いてくれ、すっかりリラックスした表情を見せてくれるようになったのです。

そうして、楽しい日々はあっという間に過ぎていきました。

そして、半年後…思いもかけぬ出来事が起こったのです。

確かに、お金は払っていないけれど…でも、これってひどくない?!

ある日、あきこさん宅に1本の電話がかかってきました。

「もしもし、はい。えぇ…、れいこさん、ですか?はい、田中さんの、娘さん??」

電話の相手は、あきこさんがハナを譲り受けた、あの田中さんの娘さん、れいこさんと名乗る女性だったのです。

確かに田中さんはお世話になった方ですが、面識のない娘さんから突然電話がかかってきたので、あきこさんはビックリしてしまいました。

そんなあきこさんに、その娘さんは更に驚くようなことを言いだしたのです!!

「すみません、突然こんなことを言うのも大変申し訳ないのですが…以前母がお譲りしたあの子猫を、返して頂くことはできませんか??

「えぇっ!?返すって、ハナをですか??」

実は…あの母猫が先日、事故で亡くなってしまって…母がすごく落ち込んでしまっているんです。」

なんと、田中さんが可愛がっていたあの母猫が、亡くなってしまったというのです。

あれだけ大切にしていた猫だったのだから、の悲しみもとても深いことでしょう。

あきこさんも、何度か会っていただけに、悲しい気持ちになりました。

しかし、それがどうして『譲った子猫を返して』になるのでしょうか

「それは…ご愁傷様です。可愛い猫ちゃんだったのに…とても残念です。 ですが、それでどうしてうちのハナを返す話になるのでしょうか。」

「…手前勝手だというのは重々承知していますが…

あの猫は、母が長年可愛がってきた子なんです。父が亡くなってからは、母と、あの猫の2人でずっと暮らしてきたんです。

その猫が亡くなってしまって、母は今家に独りぼっちで…本当に落ち込んでいるんです。母は、せめて、あの母猫の忘れ形見である子猫と、一緒に暮らしたいと言っているんです。」

れいこさんの声は、とても沈痛で、確かに聞いていて可哀そうになる話ではありました。

ですが、だからと言って、もう半年も一緒に暮らした可愛いハナを『わかりました、ではどうぞ。』と渡すわけにもいきません。

「じ、事情はわかりますが…ですが、うちだって、もうハナと半年も一緒に暮らしているんです。もう、大切なうちの家族の一員なんです。いきなり連れて行かれては困ります。

「でも…母がすごく落ち込んでて…どうしても返して欲しいと言っているんです。そこを何とか…」

どちらも一歩もひかない、このようなやりとりが、しばらく電話口で続きました。

申し訳なさそうな雰囲気はありますが、れいこさんは、断固として自分の主張を取り下げる気はないようです。

「で、でも、そちらが子猫を譲ると、仰ったんですよ。それを、そちらの都合で『返せ』というのはいくらなんでもひどくありませんか??」

何度も同じやりとり続いたあきこさんは、少しイライラして、つい責める口調になってしまいました。

すると、同じようにイライラが募っていたれいこさんは、こんなことを言いはじめたのです。

「元はと言えば、うちの猫だったんですよ?!それをタダであげたんです。お金も払ってないのに偉そうなこと言わないでください!タダで貰ったものを、元の持ち主が『返して』と言ったら返すのが当然じゃないですか?!

ここまでくると、もう2人とも頭に血が上った状態で、きちんとした話し合いをすることはできませんでした。

結局、その日、話の結論はでませんでした。

ペットの里親になるなら、きちんとした契約書をつくるべき??

さて、では今回のケースを法的に見ていきましょう。

お金のやりとりが発生して、あるものの所有権をAさんからBさんへうつす場合、『売買契約』が成立しますね。

しかし、今回のような、ペットの里親制度を法的に考える場合、一般的には『贈与契約』があてはまるものと考えられます。

民法に規定する贈与は、自己の財産を無償で相手方に与える意思を示し、相手方がそれに受諾することによって成り立つ片務・諾成・無償の契約である

両者の間に金銭が発生しておらず、両者の合意のもと『ペット』を相手に渡すのです。

この場合、れいこさんが言うように

元の持ち主が望めば、簡単に贈与契約が取り消され、あきこさんは絶対にハナを返さなければならないのか??』というところが、今回のポイントとなります。

書面によらない贈与の場合、各当事者はいつでも撤回することができる(550条本文。詳細については書面によらざる贈与も参照)。贈与者が慎重さを欠いたまま軽率に贈与を行うことを防ぐとともに、その贈与意思が客観的に明確化されるのを待つことで後日において証明が困難となる事態を回避する趣旨である

上記だけを見ると、口約束で子猫を譲りうけたあきこさんは、れいこさんの申し出に従って、ハナを返さなければならないように思えますよね?

しかし、半年も一緒に暮らし、家族同然の存在となったハナを、言われるがまま手放さなければならないなんて、あまりにもひどい話です。

ここで、民法550条の但書が効力を発揮するのです。

書面によらない贈与であっても履行が終わった部分については撤回できない(550条但書)。履行により贈与意思が明確になった以上、もはや軽率な贈与ではないとみられるためである

つまり、これらをまとめると、


基本的に、書面をつくっていない口約束の贈与契約はいつでも取り消し可能。

ただし、既に、ものの引き渡しが終わったものについては、この時点で、元の持ち主の『贈与する』意思が明らかになるので、簡単に取り消しはできない。


ということです。

今回の子猫の贈与契約では、正式な契約書等、書面は作成していませんでした。

ですが、既に子猫の引き渡しは済んでいるため、『元の持ち主は、子猫を贈与する意思があった』とみなされ、取り消しは難しいのです。

このため、法的にみると『あきこさんが、れいこさんの申し出を必ず受け入れなければならない』ということは無いのです。

結局、今回のトラブルでは、お互いが一歩も譲らず、しばらく冷戦状態が続いてしまいました。

しかし、月日が経って、田中さんの動揺が落ち着いた頃に

『無茶なことを言ってごめんなさい。子猫は、お宅で可愛がってあげてください。』という丁寧な謝罪とともに、無事、幕をおろしたのです。

近年、ペットの里親制度は少しずつ普及してきています。

勿論、この取り組み自体は大変素晴らしいものなのですが、

実際に今回のあきこさんのように『やはり、事情が変わったから返して』といったケースや、

逆に『やっぱり育てられないから返す』等といった無責任なトラブルが散見されるのも、また事実なのです。

こうしたトラブルを未然に防ぐためにも、

・『里親に出す側』『里親になる側』双方のしっかりとした合意

・贈与するうえでの条件

などを明らかにしておくことも、大切なのです。

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最近では、法律の専門家に依頼して、ペットの贈与契約についての書面を作成するサービスも存在します。

『ペット』は、単なる『もの』ではなく、『命ある動物』です。

人間の都合でペットが振り回されることのないよう、きちんとした取り決めをしておくこともまた、大切なのかもしれませんね。

One Response to “「譲ってあげた猫、やっぱり返して」もう大切な家族の一員なのに!!本当に返さないといけないの!?”

  1. 芽々 より:

    先日やっと見つけた猫ちゃんをトライアル中に淋しいペットロスになったと言われて保護主さんに返す事になりました。愛猫を亡くしてやっと見つけた猫だっただけに悲しみが二重になってしまいました。代表の方がこんなこと初めてで申し訳ないと何度も謝っていましたが納得出来ず体調を崩しています。振り回された猫も可哀想です。やっと慣れてお腹を出してゴロゴロ言ってくれてたのに。

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