傷害事故(人身事故)では、けがの治療のために通院することになります。
けれど、中には完全に治ることなく障害が残ってしまうケースもあります。
例えば、歩けなくなってしまうような重大な障害をかかえるケースなどでは、治療を永遠に続けても治ることが難しく、治療にも限界があります。
また、治療していれば多少は症状がやわらぐものの、またすぐに症状が出てしまうなど、長い目で見ても完治することが難しい状態の場合もあります。
このような場合も含めて、それ以上治療を続けても改善が難しいという状態までくると、医師は一つの判断をしなくてはいけません。
それが症状固定です。
また、症状固定と診断された日を「症状固定日」といいます。
なお、症状固定=完治ということではありませんが、損害賠償上の関係から症状固定日が決められることになるのです。
症状固定について、詳しく説明していきます。
1. だれが判断するの?医師の判断は絶対ではない
この症状固定の判断は誰がするのか?
一般的には、患者さんの様子をみて相談しながら医師が決定します。
そこで、よくある質問として、
先生から症状固定にしませんか?と言われたら従うべきなのか?
という質問がきます。
もちろん医師も医学的見地から症状固定の提案を患者にしているわけです。
・患者自身が治療によってよくなっていると実感している状態。
・何かしらの治療効果がまだあると感じている状態。
この場合は、医師に伝えて治療を続けてもらうこともできます。
ただし、むち打ちの場合では、半年以上の治療によっても治らないようなケースはよくあり、半年をすぎると症状固定とされることがあります。
また、患者との関係を壊したくないという観点から症状固定とせず治療を続ける医師も中にはいます。
必ずしも医師が言った症状固定日までが賠償されるという事でもありません。
患者にしても、医師にしても、いたずらに治療を長引かせて、加害者に賠償させることは認められません。
2. 保険会社から症状固定といわれることもある?保険会社への対応
保険会社から
「症状固定にしてもらい、治療費を打ち切ります」
などと言われ、保険会社から後遺障害診断書が送られてくることがあります。
もちろん、賠償する側の損害保険会社にとっても、いたずらに治療期間を延ばされては困ります。
そのため、医療機関に照会して治療を継続しても症状が変わらない状況と分かった場合に「そろそろ」と言ってくるのが一般的です。
これは注意してください!!
保険会社の都合によって言われて、それに従って治療を無理やり終えてしまうこと。
保険会社の都合により「治療費を打ち切ります」などと言われても、従う必要はありません。
損害保険会社は賠償を少しでも抑えたいというのが本音です。
このような場合には、医師に診断書を書いてもらい、まだ治療する必要があることを損害保険会社に示しましょう。
症状固定は、あくまでも医師が患者の様子や訴えを考慮しながら、医学的な判断をもって診断するものです。
なお、医師から症状固定とされた場合でも治療を続けることは自由です。
しかし、その場合にはその後の治療費が自費となりますので覚えておきましょう。
さて、なぜこれほどまでに症状固定について説明するかというと、損害賠償の算出においてとても重要となるからです。
症状固定日がいつか?というのは、後遺障害の等級認定や慰謝料を含めた損害賠償額を左右します。
ですから、損害保険会社の都合はもちろん、被害者自身もいたずらに期間を延ばすなどしてはならないものなのです。